不眠遊戯ライオン (東京・渋谷)
不眠遊戯ライオン
このインストールで最も重要だったのは防音工事でした。ビル自体がRC構造ではなく、鉄骨造にデッキプレートという構造の飲食ビルの空中階(7F)で「クラブ並みの低域の音圧を出したい」というクライアントのリクエストに応える為にはサウンドシステムよりも先に徹底した防音のプランニングが必要となりました。
工事前のスケルトン状態では上階のテナントの椅子を引く音も聞こえる、という状況からのスタートでした。そして施工前の騒音テスト、施工後の騒音テストも何度も重ねてビル側、クライアントの両方と入念に確認しながら進めていくこととなりました。大きな夜景の見えるガラス開口部、排煙窓、非常扉など全ての扉も防音仕様に変更し、関係機関と確認をとりながら全て法令を遵守して進めました。結果として40-50hzの低音の効いたダンスミュージックでフロア内110dbcの音量を確保して通常営業が可能となるスペックを実現しました。
今回はスペースの都合で若干簡易的な仕様に変更していますが、TSSLのオリジナルForward Directivity Isolator(F.D.I.)システムを今回も導入しました。F.D.Iはサブの開口面(前面)以外を共振を抑え音漏れを防ぐ独自構造で囲うことで低音の騒音・音漏れに対しての効果を発揮します。また、同時にインパルスと指向性が目に見えて改善されるため、”締まった”低音となり、音素材自体とスピーカー自体が本来持っている低音の鳴りへと変化します。
上下階のテナントへの音漏れが最大の懸念事項であったことと、ステレオスタックでのサブはキャンセリングが多いという事前のシミュレーションにより、モノで3段の垂直サブアレイタワーを組んで低域を制御することとしました。サブにはVoid AcoutsicsのVenu215を選定し、メインスピーカーはVoid AcousticsのAirten V2のカスタムカラー仕様、店内のフィル・スピーカーやDJモニターにはVenu10と8を起用しました。オープン後には吸音工事を追加し、音の明瞭度や会話のしやすさを改善させています(写真はそれ以前のもの)。フロア内の音圧計、RC AUDIOのLEVELIZA、さらにトータルリミッターという構成で確実に音量を制御して安心してお店を運営できる状態も構築しています。このお店にはカラオケシステムが導入されていますが、クライアントの希望でカラオケマイクにはオートチューンをアサインしており、VoidのシステムでオートチューンをかけながらRAPができるという非常に面白いスポットとなっています。店内のデザインやドリンクのクオリティなども含め、とてもハイクラスなDJラウンジとなっています。
弊社はDJ機材一式、PAミキサー、ワイヤレスマイク、オートチューン、Void Acousticsのサウンドシステム一式、防音工事、音響工事一式、吸音工事を担当いたしました。